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ふと思いだして『オズの魔法使い』(角川文庫)を本棚から引っ張りだした。オズの国に飛ばされた少女の冒険仲間「ブリキの木こり」が、何を一番に心配しているか語られる場面である◆<自分に心がないことを承知していたから、何に対しても残酷だったり不親切だったりしないよう、すごく気をつけていた>(訳・柴田元幸)。心が欲しいブリキの木こりは、そう思っている時点ですでにやさしい◆自らに心がないことを承知せず、気をつけてこなかった者のふるまいだろう。何も感じないのかと 戦慄しながら、ロシアの為政者の顔を思い浮かべる日々が続いている◆ウクライナへの侵攻から、まもなく2週間になる。国内に反戦デモが広がると、プーチン大統領は軍に関して「虚偽の情報」の拡散を罰する法律を成立させた。やりかねないことだが、驚かないのもどうだろう? 虚偽と真実が逆になる国を造ろうとしているとすれば、悪いファンタジーが一作できそうである◆ブリキの木こりは魔法使いから、おがくずを詰めたハート形の絹の袋を「心」としてもらえる。今は誰より、プーチン氏にあげたい。
読売新聞 編集手帳より

・・・危ういハンプティ・ダンプティ。
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